この記事はSafie Engineers' Blog! Advent Calendar 17日目の記事です。
はじめに
セーフィー株式会社 AI開発部でテックリードを務める橋本です。
本記事では、私が2025年の1年間を通じて 設計・実施してきたAI開発部の技術ミーティングの取り組みについてご紹介します。
これらのミーティングは、テックリードとして掲げた「継続的な学びと成長の機会を提供し、組織全体の技術力を底上げする」という目的のもと企画しました。
具体的には、以下の4つの活動を軸として運用しています。
- 論文読み(隔週 30分)
- コード読み(隔週 30分)
- 勉強会(隔週 1時間)
- 成果発表会(隔週 1時間)
それぞれのミーティングに込めた意図と、2025年の実施状況について詳しくお話しします。
論文読み
AI開発部では、日進月歩で進化するAI技術やトレンドを素早くキャッチアップし、それを製品開発へ還元することを目指しています。したがって、業務課題に関連した論文を調査し、常に最新の動向を把握し続ける姿勢は不可欠です。
また、読んだ内容をチームにアウトプットすることは、発表者自身の理解を深めるだけでなく、聞き手となるメンバーの知見拡大にも寄与します。
2025年は、チーム全体で計31本の論文を取り上げ、議論を行いました。今年の選定テーマを振り返ると、当社の映像プラットフォーム事業に直結する以下の3分野が中心となりました。
① エッジでのリアルタイム処理
リアルタイム性が求められるエッジデバイス(カメラ)内において、推論精度と処理効率を両立させる技術です。
- 最新の物体検出: YOLOv12, YOLOv13, YOLOE など、高速かつ高精度な検出モデル
- 軽量化・高速化: MobileMambaや量子化技術など、限られたリソースで高性能なモデルを稼働させる手法
- 高度なトラッキング: 混雑環境下での人物追跡や、IDスイッチの抑制技術
② 映像解析
映像からオブジェクトや異常を「数値・構造化データ」として正確に抽出する技術です。
- 異常検知・安全管理: 建設現場の安全確認や、防犯用途での危険察知能力の向上
- 3D復元・深度推定: CameraHMR, Depth Anything V2など。単眼カメラの2D映像から、人物の姿勢や空間の奥行きを復元し、高度な判断につなげる技術
③ Multimodal & Reasoning
数値データの抽出に留まらず、LLM/VLMを用いて映像の「文脈や意味」を理解・推論する技術です。
- 映像理解の深化: InternVideo2, MM-VIDなど。長時間映像から「何が起きているか」を言語化し、検索や要約を可能にする基盤技術。
- 推論能力の強化: DeepSeek-R1, Chain of Draftなど。AIが文脈を深く読み解き、ハルシネーションを抑えて確からしい判断を下すための基礎研究
コード読み
プロダクトエンジニアにとって、設計力および実装力の向上は極めて重要です。
日常業務の進捗管理だけでは、コードレベルまで踏み込んだ品質や工夫を共有しきることは困難です。また、Pull Request上のレビューだけでは、レビュア以外のメンバーへのナレッジ共有が不足しがちであるという課題感がありました。
そこで、他者の優れた設計や実装に触れることで「自分も採用してより良いコードを書きたい」という意識を高め、自然とベストプラクティスを共有・実践したくなる文化を目指しました。
2025年は、計22回のコード読みを実施し、実装のベストプラクティスについて議論を深めました。
勉強会
論文読みで得た最先端の知識を、実用的なプロダクトとして落とし込むための「エンジニアリング力」を高めるべく、多岐にわたるテーマに取り組みました。
① エンジニアリングプラクティス・ドキュメンテーション
コードを書く以前の「どう伝えるか」「どうレビューするか」という基礎スキルに焦点を当てました。
② ソフトウェア設計
堅牢で保守性の高いソフトウェアを作るための設計理論について学びました。
- クリーンアーキテクチャ
- ドメイン駆動設計
- デザインパターン
③ テスト・品質保証
コードの信頼性を担保するためのテスト手法や、品質に対する考え方を深めました。
- テストケース設計
- コード品質の指標と管理
④ Pythonエコシステム・技術スタック
Pythonを中心とした、より実装に近い技術スタックや言語仕様を共有しました。
- astral-sh/uv の活用
- PyO3とmaturinによるPythonとRustの連携
- Pythonコードのプロファイリング手法
- 最新のPython言語仕様
- カラーマネジメントの基礎
⑤ 組織論・キャリア
マネージャーにも参加いただき、組織のあり方やキャリア構築についても視点を広げました。
- 高校野球から考える組織の進化 ~ティール組織とは~
- 「量産型エンジニア」からの脱却:面接官が語る、個性を活かす採用面接の心得
成果発表会
2025年12月現在、AI開発部は13名体制となり、組織規模が拡大しました。
人数が増えるにつれ、開発業務において「お互いが何をしているのか詳細まで掴みにくい」という状態が生じがちです。
このミーティングは、開発の成果がある程度まとまった段階で、各メンバーが実務における成果を発表する場として設けました。発表者にとっては、プロジェクトの意義・目的・成果(事業貢献)を改めて言語化する機会となります。
仲間の成果を詳しく知ることは、チーム全体のモチベーションを高めるとともに、相互理解と連携の強化につながっていると感じています。
まとめ
2025年の活動を振り返ると、これらのミーティングは単なる知識のインプットにとどまらず、「論文ベースの最先端技術を、確かなエンジニアリング力で、着実に製品へ落とし込んでいく」という、AI開発部らしい文化の醸成につながりました。
今後もこのサイクルを定着させ、技術を楽しみながら、真摯にプロダクトと向き合える組織へと成長していければと思っています。