こんにちは!セーフィーでQAエンジニアをしている福山です。
今回は、入社間もない私が、他プロジェクトのQAメンバーを巻き込み、探索的テストで製品品質を向上させた経験をお話しします。
この記事は、特にこんな方々に読んでいただけると嬉しいです。
- 探索的テストや新しい品質保証の取り組みを考えているQAエンジニアの方
- チームや部署を横断した連携で、組織全体の生産性や品質を高めたいテックリードやマネージャーの方
- 新しい環境で自身の強みを活かして成果を出したい中途入社の方
- 課題:リリースを前に、担当チームだけでは見つけられない不具合の壁
- 成功の鍵は「巻き込む力」!他チーム連携で意識した5つの工夫
- 挑戦の裏側:ぶつかった壁と、思いがけない発見
- まとめ:組織を動かし、成果を出すために必要なこと
課題:リリースを前に、担当チームだけでは見つけられない不具合の壁
セーフィーのQA部門には、合計16名のQAエンジニアがいます。それぞれが複数の製品を担当しており、私が担当する製品のQAメンバーは4名。残りの12名は別の製品に携わっています。
日頃からテストスクリプトを使った網羅的なテストと、探索的テストを並行して実施していましたが、担当プロジェクトのメンバーだけでは、どうしても見つけにくい不具合があると感じていました。
迫りくるリリースを前に「どうすればもっと品質を高められるだろう?」と考えた私がたどり着いたのが、「他プロジェクトを担当するQAメンバーを巻き込む」というアイデアでした。同じQAという職種でも、普段は別の製品に携わっているメンバーの新鮮な視点と専門的な経験を活かした探索的テストは、きっと製品の隠れた問題を発見し、品質を一段と引き上げてくれると確信したのです。
成功の鍵は「巻き込む力」!他チーム連携で意識した5つの工夫
他プロジェクトのQAメンバーに協力を依頼するにあたり、スムーズな連携と参加者のモチベーション維持が重要だと考え、以下の点を意識して準備を進めました。
1. タイミングを見極める
テストの実施タイミングは非常に重要です。今回は、機能が90%以上実装されており、かつリリースまで1ヶ月半というタイミングで協力を依頼しました。未実装の機能が多いとテスターが混乱しますし、開始が遅すぎると開発への負荷も大きくなるため、このタイミングが最適だと判断しました。
2. 心理的ハードルを下げて「テストに集中できる」環境を作る
主担当ではない製品の探索的テストはどうしても心理的ハードルがあるため、できるだけハードルを下げ、スムーズに進むようにいくつか工夫を行いました。
数値的な目標は慣れてから
まずは目的を意識しつつも慣れてもらうことを最初の目標にしました。裏では具体的な目標数値は設定していましたが、いきなり数値を提示すると逆効果だと考え、後から共有することにしました。
気軽に共有できる場を設ける
Backlogへの直接起票はやめ、スプレッドシートに記入してもらう形式にしました。これにより、内容の精度や不具合の重複を気にせず報告できるため、心理的なハードルが下がります。
バグを見つけることだけが成果ではない
不具合が検出できなかった場合でもモチベーションを下げないよう、「不具合がない」ことも貴重な情報であることを伝えました。また「違和感」や「改善点」も歓迎し、UI/UX向上に直結する重要な情報だと強調しました。
3. 上長を味方につける
プロジェクトを円滑に進めるには、上長(グループリーダー:GL)の理解と協力が不可欠です。私たちは2つのグループに分かれているため、他グループのメンバーを巻き込むには、各グループのGLの理解と協力が必要でした。事前に相談し、快諾を得るとともに貴重なアドバイスもいただきました。上層部のサポートは、プロジェクトを成功させる上で非常に心強い後押しとなります。
4. モチベーションを維持する
約1ヶ月半の探索的テストへのモチベーションを維持してもらうため、具体的な仕組みをいくつか導入しました。
週替わりの画面担当ローテーション
参加者には週ごとに担当画面を割り当て、飽きを防ぎながら主要機能を優先的にテストできるよう工夫しました。
個別フォローと密なコミュニケーション
リモートワーク中心のメンバーには、DMなどを活用して積極的にコミュニケーションを取り、不具合検出の感謝を伝えたり、困っていることがないか確認しました。
迅速なフィードバック
報告された内容は、極力その日のうちに確認し、何かしら返信するように心がけました。迅速なレスポンスは、報告する側のモチベーション維持につながります。
5. 共有の場から関係性を築く
テスト結果を数値的に可視化
毎週、テスト結果を数値的に可視化し、参加者全員に共有しました。これにより、自分たちの活動が製品品質にどのように貢献しているかを実感してもらいました。さらに、特に参考になった報告内容については、感謝の意を込めて共有し、参加者の努力を称えました。
関連題材を用いた勉強会
テストの中盤には、探索的テストに関する勉強会を開催しました。共通の題材を通して、お互いの考え方やテストスタイルを共有する機会を設け、チーム全体のテストスキル向上と連携強化を図りました。
挑戦の裏側:ぶつかった壁と、思いがけない発見
今回の取り組みでは、もちろん悩みもありましたが、幸運にも助けられる場面も多くありました。
ぶつかった壁
実施時間と他業務との調整
各メンバーの業務が見えない状況で、どの程度時間を捻出可能かは非常に悩ましい点でした。GLに相談し、最低1時間/週という下限値を設けて自主性に任せる方針を決定しました。
自身の認知度と信頼感
最も困ったのがこちらです。中途入社から半年弱ということもあり、普段接点のない他グループのメンバーに自身の存在を知ってもらい、信頼関係を築くことが課題でした。勉強会などを通じて積極的に自己開示を行い、少しずつ関係性を構築していきました。
思いがけない発見
メンバーの協力的な姿勢
通常、初めての試みでは様子見から入ることが多いものですが、率先してスタートダッシュを切ってくれたメンバーがいました。また、中盤でも熱心に多くの報告をくれたメンバー、そして終盤まで継続してテストに参加してくれたメンバーなど、様々な協力がプロジェクトを前進させました。
多様な視点からの発見
各メンバーがそれぞれの得意な観点や、様々な視点から不具合を検出してくれたのは大きな収穫でした。これにより、私自身も「こんな観点があったのか」と学びを深めることができました。この多様な視点こそが、探索的テストの真価だと改めて感じました。
まとめ:組織を動かし、成果を出すために必要なこと
他プロジェクトのQAメンバーを巻き込んだ探索的テストは、製品の品質向上に大きく貢献しただけでなく、部内間のコミュニケーション活性化にもつながる、非常に有意義な取り組みでした。
本記事の最大の価値は、製品の品質向上という結果だけでなく、その成果を生み出した「他チームを巻き込む」ための具体的なプロセスとノウハウを共有した点にあります。具体的な数値は皆さんのチームの状況によって変わるかもしれませんが、ここに書かれている工夫や考え方は、きっと皆さんの組織でも再現できると思います。
私自身のように中途入社でドメイン知識が少ないメンバーでも、今回の工夫を凝らすことで、きっと素晴らしい成果を生み出すことができるはずです。
本記事が、皆さんの品質保証活動の一助となれば幸いです。