この記事はSafie Engineers' Blog! Advent Calendar 2022 16日目の記事です。
こんにちは、開発本部 モバイルグループの池田です。
2016年入社以来、セーフィーのWebフロントエンドやモバイルアプリの開発に関わり、近年は Safie Viewer for Mobile(iOS, Android)の開発チームリーダーとして、そして今年の5月ごろからは同プロダクトのPdM(プロダクトマネージャ)という立場でも活動しています。
この記事では、エンジニア出身のPdMがセーフィーのモバイル開発においてどのような取り組みをして、またどんな課題に直面していたのかを振り返ってみたいと思います。
セーフィーにおけるPdMの役割
執行役員の植松さんと及川卓也さんの対談記事などでも触れられているように、セーフィーには多様なプロダクトが存在し、それぞれの開発プロジェクトやフェーズによってPdMの関わり方もさまざまです。
セーフィーではターゲット業界ごとに区切られたビジネスユニットと呼ばれる各組織にプロダクト企画チームが散在しつつ、PdMオフィスというバーチャル組織としてPdM全員での情報共有を行っています。 私も開発組織に身を置きつつこちらにも所属させてもらい、メンバー育成のための座談会などにも参加するなど、ずっとエンジニアだけでやってきた身としては多くの刺激と学びがありました。
そのようなPdM組織と開発チームを行き来しつつ、Safie Viewer for Mobile のプロダクトマネジメントを行なっていきます。 具体的には、機能開発の優先度設定、ユーザーニーズ調査、ロードマップ作成、技術的意思決定、開発進捗管理、品質と納期のマネジメント等々ですが、人によってはPdMの領域では無いと感じるものが含まれているかもしれません。 現時点で、私は開発チームも持ちながらPdMをやらせてもらっているため、モノタロウさんの記事にあった PdM兼任EM という動き方を意識しています。
当初、CTO森本からモバイルのPdMどうですか、という話を受けたときには、
「まぁプロジェクト内にPM(Project Manager)もおるし、やることそんな変わらんやろ」
と軽く考えていましたが、PdMというものについて調べるほどにそこに求められる能力、資質におののくばかりでした。
PdMについてぐぐると必ず出てくる三角形。これらをバランス良く備えることがPdMには求められるそうです。 もちろん自分はそんなスーパーマンではないので、そこはチームの力をしっかり頼ろうと思いつつ、 現時点で自分としては、PdMとは「プロダクトの方向性を示し、その成長に責任を持つ人」という捉え方をしています。
B2B SaaSとモバイルアプリとPdM
セーフィーはクラウド映像プラットフォームを提供しており、その大多数のユーザーは企業内での業務において、いわゆるB2B SaaSとしてセーフィーのwebやアプリを利用しています。
さまざまな業界にその利用が広がっているセーフィーでは、カメラを1台だけ設置している個人ユーザーから、数百台のカメラが見えるチェーン店の管理者まで幅広いユーザーがサービスを利用しており、利用されるカメラデバイスのモデルも数百種類といった規模になってきています。
モバイルのシンプルさを保ちつつ、いかに多様なカメラ機能を利用するか、そのためにどういう取捨選択をするか、という課題は常に悩ましい問題です。
またB2B SaaSという点では、つい先日「SaaSの解約理由の半数超が『操作性が良くない』」というニュースがありましたが、企業向けSaaSにおいてこそ使い勝手は非常に重要です。
凝ったUIよりも、最速で見たいカメラ、見たい映像に辿り着けるわかりやすさと快適さがないと、あっさりと競合にその座を渡してしまうことになります。
またこれも(おそらく)B2Bあるあるとして、案件の多くが「とりあえずPCで」実現することのみを考えており、モバイルは後付けで話がやってくることが多いです。 そのあたりも社内外のステークホルダーとうまく連携し、「最初から」モバイルはどうあるべきかを一緒に考えていけるように、自分とチームのプレゼンスを上げていく必要もあると感じています。
ところでモバイルに関わるエンジニアであれば、
「シンプルでモダンで洒落たUIで、手触りがよくて驚きがあってユーザーに愛される、毎日思わず起動したくなるアプリ」
を、つくりたいと思う方は多いのではないでしょうか。少なくとも私はそう思います。
しかしながら、セーフィーが提供するサービスは(業務効率化やマーケティングにその用途が広がってきているとはいえ)やはりまず第一に「防犯・監視」、すなわち安心・安全を得ることにその目的があります。 設置した防犯カメラをアプリで毎日チェックするより、「今日も問題ありませんでした」「昨夜2:00の映像だけ確認が必要です」と、端的に教えてもらえるならその方がいいですよね。
企業生産性に寄与するB2B SaaSにおいては、アプリ利用時間やエンゲージメント率といったメトリクスが大きいことが単純に良いとは限らず、これもまた注意が必要です。
こういった多くの相反するニーズを理解し、プロダクトのビジョンすなわち「誰の、どのような課題を解決するのか」を示し、チームを実行に導くことが、PdMには求められます。(難しい。。。)
今年の主な活動とアウトプット
PdMという立場ではなかった時期のものもありますが、モバイルアプリで今年行ったいくつかの活動・施策について振り返ってみます。
デザイナーとのチーム組成とFigma導入
1年ほど前、セーフィーのモバイル開発PJには専任のデザイナーがおらず、各案件から新規機能や画面の要件が発生すれば個別に画面案が出てくる、という状態でした。 これを「開発チームと一緒にUX改善についてトライ&エラーができるメンバーが欲しい」と、新たにデザインセンターにアサインをお願いし、改めてチームビルディングを行いました。
デザイナーはエンジニアチームと共に毎朝のデイリーmtgやレトロスペクティブ(振り返り)にも参加いただくなど緊密に連携してもらい、 開発・デザイン・企画そしてQAメンバーも交えてUX改善について議論する定例を設定し、 新規・既存画面によらず「より使いやすい」「よりわかりやすい」UIを目指して課題と改善案を出す活動を続けています。
またその過程でデザインツールをFigmaに移行しました。 それまで案件ごとの画面仕様は都度Adobe XDで共有され、またもっと抽象的なUX議論においてはMiroを使っていたりしたのですが、えいやと全画面をFigmaに移行していただきました。
工数的に迷ったところもあったのですが、結果的にこれは非常に良い選択でした。デザイナーの尽力のおかげでiOS/Androidそれぞれの画面仕様がすっきりと整理され、開発とデザイナーだけでなく、QAとのコミュニケーションも楽になりました。また、デザイナーとしてもトレンドトップになりつつあったツールの経験が得られたことは良かったようです。(その後のAdobeによる買収はビックリしましたが)
Figma導入については以前にモバイルチームの渡部さんも記事を書いてくれています。
VoC収集
もっとモバイルのユーザーとユースケースを知ろう、ということであらためて社内外にヒアリングを行いました。
しかし結論から言うとこれはまだあまりうまく進んでいません。 ここで拾えた営業メンバーの声をもとにリリースした改善があったり、一部お客様から現場のモバイル/タブレット利用について聞けたりはしましたが、アナリティクスにあらわれる数字(webよりモバイルの方が多い)ほどには、まだその利用シーンやユースケースの分布が掴めていない状態です。
いくつかの仮説はありますが、ここについては来年度にかけて、今年新たに立ち上がったデータ分析チームやUXリサーチチームとも連携して、さらにモバイルユーザーの解像度を上げていきたいと考えています。
ユーザーテスト
主に新入社員をターゲットに、アプリをまだ使ったことのない人にユーザーテストを不定期に開催しています。
- 「XXというカメラを見つける」
- 「XXさんの出社した映像を見つける」
- 「XXさんが冷蔵庫を開けたシーンをクリップ保存してDLする」
など、こちらの用意したシナリオに沿ったミッションにチャレンジしてもらいます。
そのアプリを使う様子をまたSafie Pocket2で録画して、見えてきた使いにくさやわかりにくさの課題に対して、仮説と解決案をチケット化して少しずつ改善に含めていきました。
UX改善リリース
上記のような活動を通じてタスク化した改善を多数リリースしてきました。 設定画面など目立たないところでも「わかりやすい」「使いやすい」を意識した変更が多く含まれています。
Map Viewerデモアプリ作成とPoC(進行中)
Flutterを使って、最低限のマップ機能を持つデモアプリを作成しました。
GPS搭載ウェアラブルカメラであるSafie Pocket2の発売以来、Safie Viewer(Web)の位置情報連携(マップビューアー)が進化してきました。 先月にはついにGPS非搭載のカメラも手動で位置情報が設定できるようになり、その利用範囲はますます広がっています。
モバイルでもカメラのGPS情報からマップアプリを開くことはできますが、それ以上のマップ対応も当然進めたいと考えています。 しかし、
- 実際にモバイルでマップ表示や軌跡表示を行うニーズが不明確
- 現状のViewer開発と並列で追加実装しながらUIの検証はかなり重い
- そもそも工数がない
といった課題があって足踏みしていたところ、 「じゃあFlutterでマルチプラットフォームの別アプリで最速MVP作って検証しよう」 と、半ば勢いで宣言したところもありますが、強いAndroidエンジニアがこの夏に参画してくれたこともあって、3週間ほどで見事に形にしてくれました。
これもFigmaと同じく、チームにFlutterというトレンド技術の知見を取り入れられてその効果や課題が見えたのも良かったです。 まだ社内でFBを受けている(そしてその対応工数にふたたび苦慮している)段階ではありますが、来年には何らかの形にして世に出したいと考えています。
まとめと課題
他にも勉強会の定期開催や、CI/CDの拡充や、ここにはちょっと間に合わなかった少し大型のリニューアルなども進行中なのですが、一旦このへんで置くことにします。そのうちメンバーが書いてくれることも期待しつつ、来年はこういう発信をもっと細かくやっていきたいとも思いますね。
振り返ってみて感じる課題としては、
- VoC収集の不足
- 1年を通して、既存画面・機能のボトムアップ的な改善はかなり進みました。が、ある新しい機能の実現を考えようとなったときに必要な取捨選択を決めるための指針(=プロダクトビジョン)がまだ完全ではない、そのためにもっとユーザーの声を聞く必要はあると感じています
- データによる意思決定と検証
- 今もアナリティクスを追ってはいますが、もっと「これを出せばこう変わるはずだ」という仮説のもとにPDCAを回したり、何より最も需要なKPI(いわゆる North Star Metric)をプロダクトビジョンと共に定義して、来期はプロダクトの成長を追っていきたいところです
- ビジネスビジョン
- 台数が増えるだけ売上に直結するカメラデバイスや、オプションの付加価値であるAI機能などと違って、Viewerフロントエンドは数字を直接意識しにくいところがあります。上のメトリクスの話にも繋がりますが、どの改善がどのようにビジネス的な価値を向上させるかについてもっとセンサーを張り、仮説構築と検証を行なっていきたいと感じます
いろいろ書いては来ましたが、実際のところ「普通の開発PM」的な領域をなかなか超えられていないな、という焦りもあります。 これらの課題を打ち倒して前に進むために、来年も頑張って参りたいと思います。
おわりに
モバイルアプリPdMとしての1年をざっくり振り返ってみました。 ユーザーの多様性やプロダクトの複雑性からPdMには難しい悩みがありますが、それゆえの面白さやサービスを育てるやりがいもあると思います。興味を持った方はぜひ下記をご覧ください。
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