こんにちは。「Safie Connect」のプロダクトマネージャーをしている企画本部 IoTソリューション部の坂元宏範です。
Safie Connectは、ドローンカメラをはじめHDMIで出力した映像データをLTE通信でSafieクラウドに伝送して、Live配信・クラウド録画を提供するサービスです。その開発の背景や商品の特長、リリース後の反響についてご紹介します。
開発の背景
私はSaife Pocketシリーズのプロダクトマネージャーも担当しており、Saife Pocket2の活用の調査のため、利用現場に立ち会っています。
その一環で、千葉県八千代市消防本部でSaife Pocket2の災害救助訓練に立ち合った時に、Safie Pocket2とともにドローンを使っていることを知りました。具体的には、災害現場上空にドローンを飛ばして災害現場の全体を撮影しつつ、Saife Pocket2を装着した救助部隊の映像を消防本部をはじめ各関係機関にリアルタイム配信して、現場の状況共有と救助全体の意思決定をしていました。映像が人命にかかわる意思決定に活用されていました。
その一方で、隊員が着けるSafie Pocket2とドローンの映像を同じ映像管理画面で見ることができず、スムーズな意思決定に重大な問題になりえるという話を伺いました。そして、Safieが提供している映像管理画面Safie Viewerは直感的な操作で使えるため、「ドローンの映像もSafie Viewerで管理したい!」、といった率直かつ強い要望をいただいたことがSafie Connectを開発するきっかけとなりました。
また、ドローンの活用という観点では、政府が推し進めているアナログ規制の見直しも開発スタートの追い風となりました。
「アナログ規制の見直し」では、人手不足の解消と生産性向上を目的として広い分野で規制が見直されています。たとえば建設・土木・インフラの分野では、従来では河川やダム等の維持修繕は目視・実地監査で行っていますが、ドローンや水中ロボット等の活用によって業務の効率化が一気に進むことが期待されていました。
建設・土木・インフラの各社には既にSafie Pocket2やSafie GO等のクラウドカメラが多く導入されています。今後ドローンを導入する際には、八千代消防と同様に、ドローンと他のカメラ映像の一元管理のニーズがあると確信していました。
実は、ドローンの映像を共有する方法としては、「ウェブ会議の仕組みを使ってリアルタイムで映像を伝送する」というやり方があります。
しかし、ユーザーヒアリングをしてみると、「映像伝送のためにはスケジューラーで会議を事前設定するのが手間である」、「映像の録画ができないため、撮影した映像を即座に見返せない」といった不満を抱えていました。
こうした既存の仕組みでの課題は、Safie Connectを開発する上でのヒントになりました。
プロダクトで実現すべきポイント
Safie Connectの本格的な開発を前に、最低限の機能を実装したプロトタイプを製作し、現場に持ち込み実証実験を繰り返しました。
実証実験を通して、次にあげる3点がSafie Connectの仕様を決定する上で重要なポイントとなりました。
現場で誰もが手軽に使えること
ドローンの飛行前には、機器のセットアップや安全確保のための、想定した以上の事前準備が必要でした。映像伝送のためのセットアップで現場の時間を奪ってしまい負担となることは避けるべきです。そのため、現場の負担となるセットアップが一切不要の、”電源を入れるだけで映像配信スタート”を実現させることが最重要なポイントとなりました。
利用現場を選ばない
建設・土木・インフラでドローンを利用する場合、その現場は山間部や湾岸エリアといった、街中とは異なり通信環境が悪い場所が多いです。実際に実証実験のために現場を訪れて、いざ電源を入れると、LTE通信が圏外で冷や汗をかいたこともありました。
ドローンを使う場所の特性上、通信の制約を限りなく排除して、より多くの現場で使えることも重要なポイントとなりました。ユースケースに応じて選べる映像画質
ひとえにドローンの映像の活用と言っても、目的によって要求される映像画質は異なります。
例えば、災害時の巡視用途では、人やモノの動きを見るために、映像の鮮やかさよりも映像の滑らかさが重視されます。
一方で設備の点検では、コンクリートのひびや、ボルトのさびを点検するため、映像の滑らかさよりも映像の鮮明さが求められます。
映像の滑らかさと鮮明さの両方を満たそうとすると、映像のデータ量が大きくなり、LTE通信の帯域に納まらず、映像の切断や遅延の原因となります。つまり、LTE通信の制約のもと、映像の「滑らかさ」と「鮮明さ」のバランスを取り、目的に沿った映像画質を提供する必要があります。
Safie Connectの特長
前途のSafie Connectで達成すべき3つの仕様をどのような技術や手法で達成したかを説明します。
1. 現場で誰もが手軽に使えること
Safie Connectアプリの開発は、現場での機器操作をミニマム化することを目指しました。
Safie Connectをドローンのコントローラに繋ぐ、Safie Connectの本体の電源を入れて、アプリを立ちあげるという、最短のアクションで自動的に映像がクラウドに伝送されます。
UIについては、使用頻度が高い機能アイコンに絞ってホーム画面に配置しており、一目で映像がクラウドに伝送されていることが判別がつくイラストアイコンを表示させました。
また、現場ですぐに使えるようにLTE通信は設定した状態で出荷している為、利用前に面倒な設定は不要です。細かなところになりますがケーブル類は事前に接続した状態で出荷するという工夫もしました。
2. 利用現場を選ばない
LTE通信を利用したサービスである以上、安定した通信を確保することが良いユーザー体験に繋がります。
Safie Connectで映像伝送に使う通信デバイスの選定にあたっては、1台の通信デバイスに異なる通信キャリアの2つのSIMカードを同時に挿入できる機能を持つことを要件として、京セラ製ルーター(K5G-C-100A)を採用しました。
Safie Connectではdocomo回線を利用するMVNOとau回線を利用するMVNOのSIMを使っており、それぞれの回線の電波強度から、いずれかの回線を選択することができます。
また、LTE電波が安定しない場合、自動的にハードウェア内のストレージに映像データを一次的に保存しておき、電波が安定すると映像データをクラウドに伝送する機能を入れました。この機能により、映像録画データの欠損を抑えることがでますので、電波が安定しない環境でもユーザーは安心して使用することができます。
なお、京セラ製ルーター(K5G-C-100A)の採用は、通信の安定性以外にも、放熱ファン付きで長時間の使用でも熱暴走しにくい点、長時間のバッテリー駆動ができる点もポイントとなりました。
3. ユースケースに応じて選べる映像画質
映像の「滑らかさ」と「鮮明さ」のバランスを取った映像パラメーターの設定については、実際にドローンを飛ばして解像度やフレームレートを変えた映像サンプルを撮影して、ユーザーヒアリングを繰り返しました。
その結果、Safie Connectでは以下の4つの映像画質をユーザーが任意で設定出来る仕様にしました。また、電波が弱い環境下での使用を想定して、画質を落とした設定値も設けました。
- 映像の滑らかさ優先:HD画質/30fps、SD画質/30fps
- 映像の鮮明さ優先:FHD画質/5fps、HD画質/5fps
※SD画質→HD画質→FHD画質の順で解像度が高くなります ※fps(フレームレート)は数値が高いほど映像が滑らかになります
各映像画質はSafie Viewer上で設定変更が可能で、設定変更すると設定値はリアルタイム反映されます。
サービスリリース後の反響
2023年のリリース後、ありがたいことに、Safie Connectの利用者は順調に増えてきています。
Safie ViewerとSafie Connect間の双方向通話機能を追加しましたので、現場とのコミュニケーションツールとして活用されることを期待しています。
リリース後に想定外だったのは、ドローン以外の映像デバイスのリアルタイム伝送やクラウド録画をしたいという要望が多く寄せられたことです。
要望を受け、Safie Connectを活用した解決案を提案をしましたので、その一例を紹介します。
例えば、失火防止を目的とした現場の安全パトロールでサーモカメラを使っており、その映像をリアルタイムで遠隔監視したいという要望です。
これに対しては、HDMI出力できるサーモカメラとSafie Connectを繋ぎ、リアルタイム映像配信と通話機能を提案しました。サーモカメラで異常を検知した際に、その映像は遠隔からリアルタイムで確認でき、現場への指示をスムーズに出すことができるため、現場での迅速な対応が可能となります。
また、生産設備の稼動状況をモニタリングしているシステムを遠隔から確認したいという要望もありました。
こちらに対しては、設備の稼働状況をモニタリングしているパソコンにHDMIを挿し、Safie Connectでモニタリング映像をクラウドに伝送することを提案しました。責任者が遠隔からリアルタイムで稼動状況を見れるので、平常時の監視だけでなく、非常時にも遠隔から即座に稼動状況をチェックして、迅速な対応の指示出しが可能となります。
この他にもSafie Connectを活用の要望をいただいていますので、今後も様々は映像デバイスと連携したユースケースが広がっていくことを期待しています。
最後に
Safie Connectは、ユーザーの声をきっかけに開発がスタートし、リリース後も「Safie Connectを使ってこんなことできないかな?」という相談を多くいただいております。
今後もユーザーの声をもとにSafie Connectのサービスを向上させていきますので、是非ご期待ください!