メリー・クリスマス、セーフィーCTOの森本です。 こちらはSafie Engineers' Blog! Advent Calendarの25日目のエントリーです。
早いもので、昨年創業以来10年の開発組織の振り返りについて掲載してからもう1年が経ちます。昨年の記事の最後でも触れた通り、メンバーのお陰で事業、組織、プロダクト、内部的な仕組みなど全てにおいて様々な課題を乗り越え再成長軌道に載せると共に、その先の更なる成長へ向けての仕込みも適宜進められていると実感しています。特に大きなチャレンジであったシステム刷新も専任チームを組成し、一歩一歩ですが進められている状況となっています。
さて、今回のエントリーではシステム刷新とは別の、先々に向けた重要な取り組みの一つであるAIソリューションプラットフォームについて紹介します。
はじめに
当社は主にB2B領域でクラウドレコーディングサービスを提供しています。
様々な業界のお客様の現場で、防犯だけでなく業務改善用途でも幅広く活用されており、既に27万台を超えるカメラがお客様環境で常時稼働しており、それらのカメラで録画された総量35PBを超える膨大な映像データが当社システム上で管理されています。
単純な録画視聴に加え、特に業務改善観点では映像データの解析なども重要で、既に複数の汎用的用途のソリューションの提供は行っているものの、お客様からも業界、課題に特化、もしくはお客様に特化したデータ活用のご要望を幅広く頂いており、より広範囲で効率的に様々なソリューションの開発、提供を進められるような仕組みの整備が急務となっています。
尚、データ活用という観点ではAIの利用は当然考慮に入れる必要がありますので、如何にAIを活用したソリューションの提供を効率的に行えるかも重要な要素と捉えています。
AIソリューションプラットフォーム概要
実現したいこと
冒頭で触れた通り、我々は映像データを活用し、我々のサービスをご利用頂いている様々な業界のお客様の現場課題の解決を進めて行きたいと考えています。ただ、様々な業界が存在し、その中の課題もまた多様な状況で、これらを我々単独で実現するのが不可能に近いのは明白です。(図2参照)
だからこそ我々は我々のシステムをプラットフォームと定義し、APIやSDKを活用してデータを活用できるような機能を既に提供してきています。
今後に向けてはこれを更に発展させ、他のAI開発者も容易にお客様の課題解決につながるAIソリューションの開発と展開を行える仕組みを整備し、多面的にこれらの活動を進めていく事が必要だと感じています。
大前提として、AIソリューションの開発には適切なデータ活用が必要ですので、我々はまずはそれらを促進する為に何を実現する必要があるかの整理を行ってきました。
AIソリューション開発における課題
適切なデータ活用を実現するための仕組みの整理を行っている中で、AI開発者とデータホルダー(我々に取ってのカメラをご利用頂いているお客様)がそれぞれ課題を抱えている事がわかりました。(図2参照)例えばデータホルダーで言うと、そもそもデータ提供を行うメリットが不明確だったり、いざデータを提供するにも手間がかかります。また、昨今は個人情報やプライバシーにも十分に配慮をする必要があります。一方で、AI開発者側はAIモデルを開発しようにもデータの収集に手間がかかったり、いざAIモデルを準備してもアプリケーションとして提供する環境が必要となります。
これらの課題がデータ活用の促進とAIソリューションの開発効率を高めるための課題となっている事がわかりました。
システム構成イメージ
データホルダー、AI開発者の抱える課題を解決するため、我々は当社が管理する映像を教師データとして活用し、効率よく且つ一気通貫でAIソリューション開発が行える仕組みを提供すると共に、開発したAIソリューションが当社のカメラやクラウドプラットフォーム上に直ぐに展開でき、実行可能な環境を整備していきます。(※大前提として当社が管理するデータはデータホルダーに帰属していますので、その活用にはデータホルダーの合意が必須です)
これによって、データホルダーはデータの取り回しやセキュリティについてあれこれケアする必要がなくなり、一方でAI開発者はAIモデル開発にできるかぎり集中し、データ収集に工数を割く必要も無ければ、アプリケーションの展開先も当社の環境を活用することにより素早く顧客に価値提供を行う事ができるようになります。
我々としては、わざわざデータ収集しなくとも、データホルダー環境に展開済みのカメラによって録画されたデータを活用できるのも非常に重要な点ですが、開発したAIソリューションを稼働中のエッジAIカメラやクラウドシステム上に展開し素早く利用して頂く状況に繋げられる点も非常に価値がある点であると捉えています。
目指すべき姿
我々は、先ほどの仕組みによりデータホルダー、AI開発者の抱える課題を解決し、AIソリューションの効率的な開発、展開を可能としていく事だけでは、目標とする様々な業界の課題解決の実現には不十分だと考えています。
AI開発者がどこにどのような課題が存在するか十分に分かっていないケースがあれば、一方でデータホルダーも課題解決に向けてどのAI開発者と連携すればよいか不明確なケースがあると推測しています。
これらの状況を解決するために、上記に加え、データホルダーとAI開発者の連携を実現するような場の構築、提供を行う必要性も感じており、合わせて整備を行っていくことを考えています。
このようなデータホルダーとAI開発者間の多対多のコラボレーションの実現こそが、先程の仕組みの効果を適切に発揮させるために必要であると捉えています。
経産省PJへの採択
我々は上記で説明したAIソリューションプラットフォームについて、数年前より検討を進め少しづつ進めていましたが、この度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)が公募した「ポスト5G情報通信システ厶基盤強化研究開発事業/データ・生成AIの利活用に係る先進事例に関する調査(調査類型1)」に採択されることが決まりました。
データ活用に対しての国としての課題感、危機感の現れでもあると捉えています。我々としてはこれはもちろん好機ではありますが、一方で国策の一貫に選定頂いた責任と自負を感じつつ、開発活動を加速して行きたいと考えています。
今後に向けて
AIソリューションプラットフォームの開発を進め、2025年中には外部に公開できるよう準備を行うべく進めています。
合わせて、その有効性を示すべく実際のデータホルダー、AI開発者にもご協力頂き、AIソリューションプラットフォームの効果の実証も進めていきます。
更に、有効なコラボレーションの場として成立させていく必要があり、その為にはよく知って頂く事が必須だと捉えていますので、認知向上に向けた取り組みも順次行っていきます。
テックブログでも継続的に具体的な取り組みについてアップデートする想定で検討を進めています。
まとめ
我々はお客様の様々な現場課題の解決を多面的に推し進めるため、それぞれの抱える課題の解決を行える仕組みの整備と、データホルダーとAI開発者の多対多のコラボレーションの場を提供すべくAIソリューションプラットフォームの整備を進めて行きます。
これらの仕組みを活用しデータ活用を多面的に進めて行くことにより、様々なお客様がAIの有用性を実感できるような社会の実現を目指して行きます。
最後に
今回はAIソリューションプラットフォームの紹介となりましたが、セーフィーでは他にも更なる成長へ向けて様々な開発に関わる取り組みを行っています。それらに一緒に関わってくれるエンジニアさんを絶賛募集しています!!!!